紳士の国イギリスは肥満大国?イギリスの”アレ”が巨体化していた
「肥満大国」と聞いて真っ先に思い浮かぶのはどこの国だろうか。
アメリカ?それともメキシコ?実は、あまり印象にないが、
紳士の国イギリスも深刻な肥満問題を抱えている。
スリムな人間がもてはやされるこの時代、
「太ってたっていいじゃないか」と、
開き直って過ごす人も多いかもしれない。
しかし、その体重は時として人の生死に作用する
重要な分岐点と成り得ることをあなたは知っているだろうか。
その分岐点というのがこちらだ。
これは、北ウェールズにある消防隊会社、
ルース・リー社(Ruth Lee Ltd.)の人命救助訓練の様子だ。
ニュースサイト「東洋経済ONLINE」によると、
イギリスでは国民の肥満率が年々増加しており、
現在では成人の2/3が肥満(BMI25以上)であり、
子供では1/4程度が肥満に当てはまるのだという。
このまま何の対策も取られなければ、2050年には
イギリス国民の半分が肥満体になってしまうという予測がされており、
成人病の治療に掛かる医療費などを考慮すれば、
国家予算的にもかなりの危機的状況とも言える。
さらに、もう一つ重大な問題がある。
建物火災が発生した際、逃げ遅れた人が煙を吸い
その場で気絶してしまうケースも少なくない。
そんな時、体重が軽い人と重い人、どちらが早く救助されるだろうか。
…そう、お察しの通り、体重の軽い人の方が救助に掛かる時間が短い。
つまり、体重が軽ければ、救助に駆けつけた隊員に
すぐさま外へと運び出してもらえる確率が高まり、生存率も上がる。
だがもし、意識を失った人の体重が
隊員の手に負えないものだとしたら…?
救助を断念される可能性も、ゼロではない。
ところがどっこい、
そんな事実はお構いなしにイギリスの肥満率は増加する一方。
イギリスの消防隊員はこれまで、
成人男性の平均体重程の重量を持つマネキンでトレーニングをしていたが、
その技術が現場では通用しなくなってきているそうだ。
そういった経緯もあり、ルース・リー社ではこの度
これまでに無いレベルのマンモスヘビー級マネキンを導入。
隊員たちは、緊急時の肥満体救助に備え、日々訓練を重ねているという。
ちなみにこの巨大マネキン、重量は254㎏もあり、
重心の位置や関節の可動域など、
隊員のために可能な限りリアルに作り込まれているらしい。
そもそも、なぜイギリスではこれほど肥満が深刻化しているのか。
調べてみたところ、3つ程それらしき要因が見つかった。
1.紅茶文化
皆さんご存知の通り、
イギリスにはいわゆる「紅茶文化」というものが存在する。
あのリプトンや、トワイニング、ブルックボンド、ウェッジウッドなどの
有名な紅茶メーカーも、全てイギリスの会社だ。
日本人も、コーヒーを飲む人が多いとはいえ、
緑茶や麦茶がある分、お茶そのものへの馴染みは深い。
会議室のテーブルに緑茶のボトルが並んでいる光景も、ごく一般的である。
しかし、イギリスの紅茶事情には問題点がある。
それは「砂糖を使い過ぎること」だ。
日本人に最もよく飲まれているお茶は緑茶であるが、
大抵の人は何も入れずにそのまま飲む。
(海外で販売されている緑茶(グリーンティー)には砂糖が含まれており、甘い。
国外へ旅行する機会のある人は試してみよう)
だが、紅茶となると話は別だ。
日本人でも、紅茶に砂糖を入れる人は多数いるが、
毎日紅茶を飲む人はあまり多くないだろう。
ところが、イギリス人の多くは日常的に紅茶を飲む習慣を持っており、
一日に、平均してティーカップ2杯~3杯程の紅茶を飲むそうだ。
もちろん、その都度紅茶に砂糖を入れて。
これだけでも相当な量の砂糖を摂取しているように思えるが、
これだけでは終わらないのが英国式ティータイムだ。
やはりというべきか、茶を飲んでいれば菓子が欲しくなるのは
万国共通のようで、お茶請けのビスケットやスコーン、
ジャファケーキなどのお菓子を紅茶と共に楽しむ習慣がある。
いわゆる「アフタヌーン・ティー」というやつだ。
こうした紅茶文化が発展しているイギリスは、
料理よりもお菓子のクオリティが高いことでも知られる。
(逆に言えば、食卓の料理はお菓子に後れを取っているとも言える)
これらの現状から、国民による砂糖の過剰摂取問題の解決に向けて
イギリスでは、2016年に「シュガー・タックス」(砂糖税)が導入された。
砂糖税とは、基準値以上の砂糖の含まれる飲料(主にソフトドリンク類)に
約20%の税金が掛けられるというものである。
賛否両論あったシュガータックスだが、改善に繋がるかどうかは
まだまだ経過を見る必要がありそうだ。
2.脂っこい食事
上の写真は、皆さんご存知フィッシュアンドチップスだ。
イギリスではその他に、ジャガイモを使った料理が多い。
また、ファストフード店が多くあったり、加工食品も充実している。
1人暮らしや共働きの家庭の多いイギリス人にとっては、手軽でおいしい
これら食べ物は手を伸ばしやすいものだと考えられる。
Heaven is an American salary,
a Chinese cook,an English house,
and a Japanese wife.
(最高の人生とは、アメリカ人の給料を貰い、
中国人の料理人を雇い、イギリス人の家に住み、
日本人の嫁を貰うことだ)
Hell is defined as having a Chinese salary,
an English cook, a Japanese house,
and an American wife.
(最悪の人生とは、中国人の給料を貰い、
イギリス人の料理人を雇い、日本人の家に住み、
アメリカ人の嫁を貰うことだ)
- James H. Kabbler III.
(ジェームズ・H・カブラー 三世)
これは、19世紀頃に流行ったジョークで、他にも様々なバリエーションがある。
それにしても、19世紀から各国の印象はあまり変わっていないようにも思える。
3.パブ文化
イギリスで有名なものといえばパブ(酒場)だ。
イギリスのロンドンを舞台とした映画「ハリー・ポッター」シリーズの
「三本の箒」でハリー達がバタービールを楽しんだように、
現実世界のイギリスでもパブは馴染み深いものとなっている。
(バタービールには確かアルコールは含まれていなかったはずだが)
イギリスで人気のお酒はビールで、
ラガービールやスタウトと呼ばれるものが特に好まれている。
また、驚くべきデータがある。
WHOの調査によると、イギリスの非飲酒率は
調査対象国189カ国の内、最下位。
つまり、国民の大半は飲兵衛なのである。
あの、ウォッカ片手に寒空の下をぶらついている様なロシア人よりも
(これは筆者の完全なる偏見だが)
多くの酒を飲んでいるという事実は驚きだ。
おそらく、アルコール度数はロシアの酒より低いのだろうが、
それでも意外性を感じる。
以上、3つの要因からイギリスが肥満大国であることはよくお分かり頂けたと思う。
イギリスの消防隊員は、日々の訓練にさぞ腰を痛めていることだろう。
我々日本人も火事場の馬鹿力を当てにせず、健康的な毎日をを送るためにも、
体調管理には気を配っていきたいところだ。